あっぱれで、ご立派 日本女子!

前回の、東京オリンピック女子バレーボール決勝戦、ソ連との戦いで、会場は1点取るたびに大歓声が起り一喜一憂していた。

2セット連取して迎えた3セット目、13点取って勝利が目前に迫って気が緩んだのかソ連に9点を連取されてしまった。それでも気を引き締めて勝負に臨み、最後はソ連のオーバーネットの反則で勝利した!会場も選手も一瞬静寂状態であったが、日本の勝利を確信した時、大松監督率いる選手の顔は美しい涙であふれていた。

しかしキャプテンで名セッターの河西昌枝さんだけは全く涙を見せなかった。・・・なぜか?

 

後でのインタビューで、「なぜ、あの時、泣かなかったのですか?」の問いに答えた河西さんは「私にはキャプテンとしての仕事が残っています、ソ連のキャプテンに挨拶をしなければならないのです。泣いてなんかいられますか!」と、そう答えたと!・・・・・

何という素晴らしい方か!恐れ入った!

東洋の魔女ならぬ、夜空に燦然と輝く星・銀河の英雄である!

National flags of various countries 

つい先日、偶然にも、この時の映像を見る機会があり、この事を確認しようとテレビにかじりついて見ていました。

勝利の瞬間、他の選手は抱き合って泣いていたし、大松監督は立ち上がろうとせず、座ったまま今までの道のりを振り返っていたようだったが、河西キャプテンだけはキリっとした顔(いい意味で50歳位の風格があった)で、さっと相手のコートに走って行かれていました(その直後ソ連のキャプテンに挨拶されたのだろう!)のを見た時、あ~、あの時の話は本当だったのだと、改めて感激しました。

河西さんが笑顔を見せたのは、表彰台で金メダルをかけてもらった時だった。

(当時はキャプテン一人だけが表彰台に上っていた)

 

一連の勝負の行方を見ていた三島由紀夫が後に次のような事を、当時の週刊誌に連載されていた。

「終わりの美学」の中の「英雄の終わり」で、河西昌枝さんの事を、以下の様に、大学時代に読んだ本に書いてあった事を思い出しました。

・・・・・・「もっとも有名なオリンピック決勝の大勝利を見ていた時も、私は英雄としての彼女よりも、ものすごく気の利き、ものすごく俊敏な女主人(ホステスの長)として、彼女を見ていたようです。

当時、私がそれについて書いた次のような文章があります。彼女(河西選手)が前衛に立つとき、水鳥の群れの中で一等背の高い水鳥の指揮者の様に、敵陣によく目をきかせ、アップに結い上げられた髪の乱れも見せず、冷静に敵の穴をねらっている。ボールは必ず一応彼女の手に納まった上で、軽くパスされて、ネットの端から、敵の盲点を突くように使われる。

河西は素晴らしいホステスで、大勢の客のどのグラスが空になっているか、どの客がまだ皿に首を突っ込んでいるかを、一瞬一瞬見分けて、配下の給仕たちに、ぬかりのないサービスを命ずるのである。ソ連はこんな手痛い、良く行き届いた饗宴にへとへとになったのだ」と。・・・

(個性的な見方をする人がいるが、分かるような気がします。こんな気の利いたレストランに行きたいですね!)

余談ですが、大学時代の柔道部の監督岩間先生(警視庁出身)が大松監督率いるニチボーカイズカの練習を見に行った時の感想を、「男では、耐えきれないだろう、気が狂うだろう」と、言っていました。しかし、選手を殴るなどの行為は全くなく、「何故、回転レシーブが必要なのかを延々と何時間も説得していて、選手たちは、真剣に聴いていた!」とも証言しておられます。(別な人からの証言)・・・

河西昌枝選手のような人はもう現れないのかもしれませんが、東京オリンピックでの日本選手にエールを送ろうと思います!